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顕微鏡の倍率(対物倍率・総合倍率・モニタ倍率)の違いについて

顕微鏡を使用するにあたり、倍率を重要な要素と考えられる方は多いかと思います。

確かに、倍率が不適切な機器で観察しようとしても思うような像を見ることが出来ないのは当然ですし、より細かい部分を観察したい場合に高倍率を求めるのは自然な流れではあります。

しかしながら、各社製品カタログ等で顕微鏡の倍率を表す場合、複数種の倍率を用いたものが混在しているため、倍率の数値だけを見ても比較ができなかったり、用途に合う倍率なのかどうかを判断できない可能性があります。

そこで、今回は一般的によく用いられる「対物倍率」「総合倍率」「モニタ倍率」について解説していきます。

顕微鏡の対物倍率とは

顕微鏡における「対物倍率」とは、対物レンズのみの倍率を指します。

例えば、生物顕微鏡YX-1500で対物レンズ40倍を光路に入れて使用する場合、「対物倍率40倍」ということになります。

対物レンズの倍率を指すため、接眼レンズやカメラ等、組み合わせる機器・レンズ等の倍率は無関係

対物倍率は接眼レンズやモニタ等の他要素に左右されないため、接眼レンズ観察時・顕微鏡用カメラでのモニタリング・撮影された静止画等、どのような状況であっても一定の指標として用いることが出来ます。

反面、接眼レンズの倍率や顕微鏡用カメラのズーム倍率が異なる環境で観察を行った場合、対物倍率だけでは環境の再現や共有が難しいといったことが考えられます。

顕微鏡の総合倍率とは

顕微鏡における「総合倍率」とは、対物レンズ倍率と接眼レンズ倍率の積を指します。つまり、生物顕微鏡YX-1500で対物レンズ40倍を用いて観察した場合であっても、倍率10倍の接眼レンズを使用した際は10倍×40倍で総合倍率400倍、倍率20倍の接眼レンズを使用した際は20倍×40倍で総合倍率800倍となります。

総合倍率で表現した場合、環境の再現や共有が行いやすいというメリットがありますが、対物倍率と混同して考えてしまうと認識が大きくずれてしまうことがあるので注意が必要です。

同じ「40倍」でも、対物倍率と総合倍率で観察像の大きさは全く異なる

また、顕微鏡像は対物レンズによって作られた像を接眼レンズで拡大して観察しているため、同じ総合倍率400倍の像であっても、対物レンズの倍率が高い顕微鏡像のほうが分解能が高く、より細かい点まで判別が出来るということも理解しておく必要があります。

上図の場合、どちらも総合倍率は同じ400倍ですが、対物倍率の高い上段の組み合わせのほうがより細かい点まで観察することが出来ます。

顕微鏡(顕微鏡用カメラ含む)のモニタ倍率とは

顕微鏡および顕微鏡用カメラにおける「モニタ倍率」とは、その名のとおりモニタ・ディスプレイに表示された際の倍率を指します。

モニタ倍率は簡単に言うと「モニタに映し出されたときに何倍の大きさで見えるか」ということで、例えば直径1mmの胞子をモニタに映し出した際に直径100mmで表示されていると「モニタ倍率100倍」ということになります。

ここで気を付けないといけないのは、倍率に「モニタに映し出されたときの大きさ」が関わってくるため、モニタのサイズが大きければ大きいほど倍率が高くなるということです。

全く同じ顕微鏡・顕微鏡用カメラで撮影した標本であっても、モニタサイズが異なることで倍率が異なってきます。

モニタ倍率の計算式

モニタの大きさやセンサーの大きさ(対角長さ)が分かれば、以下の計算式でモニタ上の倍率を求めることも可能です。

例えば、対物レンズ40倍での観察時、0.5倍のCマウントアダプタを介して1/2インチのカメラを接続し、27インチのモニタに全画面表示した場合のモニタ表示倍率は以下のようになります。

40×0.5×(27×25.4÷8)=1714.5倍

倍率の違いについてのまとめ

顕微鏡倍率〇〇倍!とひとくちに言ったとしても、その倍率が対物倍率なのか、総合倍率なのか、モニタ倍率なのかによって、表しているものが大きく異なって参ります。

お互いの認識に相違が無いように、倍率の種類を意識して考えるようにしましょう。