動画撮影に適したカメラとは
複数の顕微鏡用カメラから、用途に合った製品を選ぼうとするとある程度の知識が必要になります。
本記事では、動画撮影を目的とした場合にお勧めのカメラ機種を紹介しています。
動画撮影で重要なパラメータ
動画撮影を目的とした場合、機種の選定において重要になるパラメータを解説します。
最大フレームレート(fps)
フレームレート(fps)は、秒間にどれだけの数のコマが撮影できるかという性能です。
動画は、実際には数多くの静止画の集まりであり、パラパラ漫画のようにすばやくコマを切り替えることにより動きを表現しています。
このとき、1秒間のコマ数が多ければ滑らかな動きになり、逆にコマ数が少ないとカクカクした動画になります。この秒間のコマ数がフレームレートです。
最大フレームレートはその名のとおりあくまでも最大値であり、常にその値が保証されるものではありませんが、その他の設定をいくら変更しても最大値以上の値になることは無いため、最大フレームレートが十分な値であるということは非常に重要です。
人間の目で滑らかに見える目安は秒間30コマ程度(30fps)といわれているため、滑らかな動画撮影を希望する場合は30fps以上のフレームレートが得られるカメラを選びましょう。
センサー感度
センサー感度は、そのカメラが暗いものを撮影するのに適しているかの指標となっており、高いほど微弱な光を受け取ることができます。
一見すると動画撮影にはあまり関係なさそうに見えますが、センサー感度は露出時間(シャッタースピード)を大きく関わっており、これがフレームレートの増減に影響します。
十分な明るさが得らえるような標本であればそれほど問題にならないケースが多いですが、高倍率像や偏光・暗視野といった、撮影対象の輝度・明度が乏しくなる場合には非常に重要です。
ある対象に対し、詳細が観察できる明度にするために必要な露出時間が100msのカメラがあるとすると、最大フレームレートが100fpsあったとしても、1秒間(1000ms)の間には10コマしか撮影できず、10fpsの動画に制限されます。もちろん、露出時間を短くすればフレームレートの高い動画の撮影自体は可能ですが、暗く分かりづらい動画になってしまいます。
滑らかな動画撮影を希望する場合、少なくとも30fps以上が確保できる露出時間(33ms程度)で十分な明度が得られるセンサー感度を持ったカメラを選ぶことが重要です。
留意しておくべき要素
露出時間と最大フレームレートを考慮すれば、基本的には滑らかな動画撮影が可能です。ただし、次のような点により、想定していたフレームレートが得られない場合があります。
動画ファイルの上限フレームレート
パソコン用のソフトウェアで動画撮影を行う場合、.mp4等の動画ファイルのフレームレート上限値は60fpsとなっています。
前述した人の目に滑らかな映像として認識されるレベル(30fps)であれば特に問題になりませんが、プレビューフレームレートが100fpsを超えるようなカメラを使用する場合、プレビュー時の映像をそのまま動画として撮影できるわけではないため注意が必要です。
動画撮影処理の遅延によるフレームレートの低下
動画撮影は、前述のとおり非常に多くの静止画の撮影を行い、それを動画ファイルとして生成するため、PCには大きな負荷がかかります。
そのため、60fps以内の動画であっても、PCの処理速度の限界によりフレームレートが低下する場合があります。
動画撮影処理遅延によるフレームの重複
フレームレートの低下と類似していますが、動画ファイル自体は撮影時にフレームレートが決定されるため、処理遅延によりフレームの不足が起こります(60fps動画に対し、実際には30フレームしか撮影できなかったような場合)。
このような場合、不足したフレームはその直前等のフレームをコピーし、フレーム数は60fpsとなるように調整されます。そのため、プレビュー時には1フレームだけで捉えられていたようなものがあった場合、動画ファイルになった際には情報が失われている可能性があります。
HDMIカメラの場合はフレーム重複等が起こりにくい
前述の2つの懸念点はPCの処理やUSBでの通信上限により生じるため、カメラ本体のみで動画生成まで完結できるHDMIカメラではこのような問題が生じにくいものとなっています。
60fps撮影時にすべてのフレームがユニークなものとなることを保証するものではありませんが、動画撮影においてなるべく情報損失を避けたい場合、HDMIカメラの選択をおすすめいたします。