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露出時間とゲインについて

顕微鏡用カメラを使って静止画・動画の撮影をしたり、リアルタイムに映像を閲覧するような場合、映像の明るさに影響してくるのは露出時間・ゲインという2つのパラメータです(当然、顕微鏡の照明光の強弱も関わってきますが、ここでは割愛します)。

本記事では、露出時間とゲインの効果、およびそれぞれの値を増減させた際のメリット・デメリットについて解説していきます。

マニュアル露出による調整を前提として解説しています。自動露出設定については以下記事をご参照ください。

露出時間増減の効果

露出時間はシャッタースピード・露光時間とも呼ばれ、カメラがサンプルから光を集める時間を指します。

同じ明るさ・光量のサンプルを撮影する場合でも、カメラが光を集める時間が長いほどより多くの光子をイメージセンサーが得られるため、撮影像は明るくなります。

ゲイン増減の効果

ゲインは、イメージセンサーにあたった光を電気信号に変換する際の増幅する能力を指します(一般的なデジタルカメラでのISO感度とほぼ同義)。

イメージセンサーにあたった光が同じ量であった場合、ゲインの値が高いほど多くの電気信号に変換するため、撮影像は明るくなります。

露出時間増加・ゲイン増加のメリット

露出時間・ゲインともに、増加させることで撮影像が明るくなるという効果が得られます。これらを増加させる基本的な目的はこれであり、より明るい像を得る・光量の乏しいサンプルの撮影を行うといった用途に用います。

顕微鏡写真の撮影において、明るくコントラストの高い像を得られるのであれば、これらの値は高めておいた方が良いように思えますが、値を増加させることに対してのデメリットも存在します。

露出時間増加のデメリット

過剰に露出時間を長くし過ぎた場合の飽和(白飛び)はもちろんですが、露出時間の増加は明るい像を得るために「イメージセンサーに光をあてる時間を延ばす」というものであるため、1つの像を得るための所要時間が長くなります。

顕微鏡用カメラのリアルタイムプレビュー像や動画等は、静止画を連続して見ることで動きのある映像として認識していますが、1秒間のコマ数(フレームレート)の多少により、映像の滑らかさに違いが生じます。

カメラ自体の上限値も関係してきますが、例えば短い露出時間であれば秒間30コマ撮影ができ、滑らかな映像として見ることが出来ていた場合、露出時間を長くすることで秒間5コマのような少ないコマ数となり、カクつきや動作にラグを感じる映像となってしまうデメリットがあります。

つまり、露出時間増加により像の明るさを得る場合、映像の滑らかさや動きに対する追随性が低下する可能性があります。

ゲイン増加のデメリット

ゲインについても、値を大きくし過ぎた場合の白飛びの可能性はありますが、より問題として考えられるのがノイズの発生です。

ゲインは、イメージセンサーが受けた光に対しての増幅値を増減させます。これは、「明るくしたい」と考えた箇所だけではなく、すべての出力値を増加させることになるため、増加前には認識できなかったような僅かなノイズも同時に増幅され、撮影像にノイズが生じやすくなります。

ゲインの増加によって像の明るさを得る場合、撮影像にノイズが生じやすくなる(僅かなノイズが視認できるレベルに増幅されてしまう)というデメリットがあります。

露出時間・ゲインの調節方法

露出時間・ゲインそれぞれにメリット・デメリットがありますが、これらをうまく調整しながら、希望の撮影像を得るためにはどうすれば良いのでしょう。

撮影の目的により調整の目安が異なりますので、それぞれ解説していきます。

静止画撮影の場合(対象物が静止している場合)

動かないサンプルを撮影する場合、リアルタイムプレビューの際は必要となるものの、いざ撮影を行うタイミングにおいてはフレームレートを重視する必要がありません。
そのため、明るさを得る目的においてフレームレートを高く保てる代わりにノイズが生じやすくなるゲイン値を増加させるメリットは殆ど無いため、ゲイン値を最小値に設定し、必要な明るさが得られるまで露出時間を延ばして調整します。

ゲイン最小値/長露出時間で撮影した画像。ノイズは見られない。

これにより、ノイズが最小限に抑えられたクオリティの高い撮影像が得られます。露出時間の長さによっては像追随性が大きく低下しますが、動かないサンプルの撮影であれば問題なく対応できます。

露出時間の増加により追随性が低下しているため、動きには追随できない。

動画撮影・リアルタイムプレビューの場合

動画撮影やリアルタイムプレビュー等、像の追随性を優先する場合は、露出時間だけでの調整を行うと滑らかな映像が得られない恐れがあります。

このような場合、まずは露出時間を希望のフレームレートが得られる時間に設定します。秒間30コマ程度の場合は33ms、20コマの場合は50msというように、1000ms(1秒)を必要コマ数で割った値に設定します。

露出時間を短めに、ゲインを高く設定して撮影した画像。全体的にノイズが見られる。

設定した露出時間では像の明るさに不足がある場合、ゲインを少しずつ増加させ、任意の明るさが得られる値に調整します。
ゲイン値によってはノイズが生じてしまうこともありますが、像追随性を保ったまま明るい像が得られます。

高いフレームレートが得られているため、対象物の動きへの追随が可能。