三眼生物顕微鏡での同焦点調整
三眼鏡筒タイプの生物顕微鏡は、肉眼で観察する接眼レンズ(接眼鏡筒)のほかに、カメラ等の撮影機器を装着しておける撮影直筒が備わっています。
本記事では、生物顕微鏡における同焦点調整(接眼レンズ観察像とカメラ撮影像の焦点位置を一致させるための調整)について解説していきます。
同焦点調整は顕微鏡・Cマウントアダプタで行う
同焦点調整において基本的なことでありつつ誤解の多い点ですが、同焦点調整は顕微鏡およびカメラを接続しているCマウントアダプタの機構を利用して行うものであり、カメラ側での機能・操作ではありません(一部オートフォーカス機能等を搭載したカメラもありますが、これは一時的な焦点の誤差を補正するもので、常時焦点が一致するようにするものとは意味合いが異なります)。
そのため、顕微鏡機種や使用するCマウントアダプタの仕様によっては同焦点調整機構が備わっていないこともあり、このような場合は調整を行うことができません。あらかじめご留意くださいませ。
生物顕微鏡 対物レンズ間の同焦点調整
Cマウントアダプタに調整機構が備わっているか否かにかかわらず、まずは顕微鏡の対物レンズ間の同焦点を確認します。
とはいえ、基本的に生物顕微鏡の対物レンズに焦点調節機構が備わっていることは無く、対物レンズ間の同焦点が得られるかどうかは「同焦点距離が一致する対物レンズを使用しているか」「正しく焦点を合わせているか」の2点が重要となります。
対物レンズの同焦点距離
同焦点距離は対物レンズに設定されております。顕微鏡にあらかじめ付属する対物レンズであれば、基本的には同焦点距離が一致することがほとんどですが、対物レンズのみを追加して装着するような場合には注意が必要です。

例えば、レイマーの生物顕微鏡用対物レンズは同焦点距離45mmですが、他社製品には37mmや60mmといったものがあります。
これらを混在させた場合、対物レンズ間の同焦点は得られませんのでご留意ください。また、同焦点距離が異なる対物レンズが混在する場合の別の注意点について、以下記事にて案内しております。併せてご覧ください。
生物顕微鏡での焦点調整手順
生物顕微鏡の焦点調整は、以下の手順に沿って行います。
1. 低倍率対物レンズを光路に入れる

まずは顕微鏡にセットされているなかでもっとも低倍率の対物レンズを光路に入れます。
2. 標本をステージに設置し、対物レンズをできるだけ近づける

標本をステージに設置したら、顕微鏡は覗かず、対物レンズと標本がなるべく近づくようにステージの高さを粗動ハンドルで調整します。
3. 標本から対物レンズを徐々に離し、焦点を合わせる
顕微鏡の接眼レンズを覗き込みながら、ステージと対物レンズが遠ざかる方向へ粗動ハンドルを操作し、焦点を合わせます。
おおよその焦点が合う位置までは粗動ハンドルで操作し、僅かな焦点ずれは微動ハンドルで調整します。
4. 徐々に対物レンズ倍率を上げ、焦点を合わせる

低倍率の対物レンズで焦点が調整できたら、つぎに倍率の低いレンズに切り替え、顕微鏡を覗き込みます(4倍→10倍など)。
このとき、おそらく焦点は僅かに一致しない状態になっていると考えられるので、微動ハンドルで調整します。
これを繰り返し、通常使用する最も高い倍率の対物レンズの焦点を合わせます。
※100倍対物レンズ等の油浸用レンズは対物レンズ切り換え時の清掃作業等が煩雑になるため、通常は40倍・60倍といった乾燥系対物レンズの高倍率なもの、とご理解ください。
5. 視度補正環を調整する

視度補正環が片側にある場合、補正環の無いほうで焦点を合わせ、補正環のある側を覗き込んだ際にずれが生じるようであれば、視度補正環を調整します(左右眼の視力差の補正)。
6. 対物レンズを最低倍率に切り替える
高倍率での焦点調整後、最低倍率の対物レンズをふたたび光路に入れ、同焦点が得られていることを確認します。
※生物顕微鏡の場合、対物レンズ間での完全な焦点一致が難しいこともありますので、あらかじめご了承ください。
カメラとの同焦点調整
つづいて、接眼レンズ観察像とカメラ撮影像の焦点が一致するように調整します。
ただし、カメラとの同焦点調整は基本的にCマウントアダプタ等のカメラ・顕微鏡の接続用アダプタに同焦点調整機構が備わっている必要があり、このような機構の無いアダプタではカメラ側での調整はできません。
純正品のアダプタでカメラを接続した場合に、大きく焦点がずれないよう設計されている顕微鏡も多くありますが、アダプタやレンズの位置、カメラセンサーの位置(フランジバック)には若干の個体差があることもあります。
焦点調整機構の無いアダプタを使用する場合、完全に同焦点を得るのは難しいと考えてください。
1. 低倍率対物レンズを光路にセットする
レボルバに複数本の対物レンズが装着されている場合、前述した対物レンズ間の同焦点を取り、もっとも低倍率のものを光路にセットしてください。
2. アダプタの高さ・レンズ位置を調整する
光路分配式の顕微鏡はそのまま、光路切換式の顕微鏡は切換操作を行い、ディスプレイ上でカメラのリアルタイム映像が確認できるようにします。
カメラの映像を見ながら、Cマウントアダプタ等カメラ取付用アダプタの調節機構を操作し、映像上の焦点を合わせます。

※アダプタの調整機構は、アダプタ自体を回転させ長さ(高さ)を変更するもの、回転機構により内部のレンズ位置が上下するもの、六角レンチ等での操作により内部レンズの上下動・位置固定を行うものなど様々です。
使用するアダプタの取扱説明書等を参照し、調整を行いましょう。
低倍率対物レンズで映像の焦点を合わせられたら、対物レンズ倍率を変更しても概ね同焦点が得られた状態になるかと思います。