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生物顕微鏡で高倍率対物レンズ切替時に標本に接触してしまう

WRAYMERの製品をはじめ、一般的に「顕微鏡」として利用されることが多い生物顕微鏡ですが、複数の倍率の対物レンズが装着されており、倍率を切り替えながら観察する仕様になっていることが多いかと思います。

低倍率レンズから高倍率レンズに切り替える操作を行った際、標本やステージに高倍率対物レンズの先端が接触してしまってうまく切り替えられない、といったことがあります。

本記事では、このような場合の原因と解決法について解説していきます。

対物レンズ切替の操作

まず生物顕微鏡の対物レンズ切替は、多くの場合が上画像の「レボルバ」を回転させて行います。

倍率の切替・変更が目的ではありますが、あくまでも回転させるのはレボルバであるため、対物レンズを持って回転させないように注意してください。

高倍率対物レンズ先端が接触する原因

低倍率対物レンズから高倍率対物レンズに切り替えた際、何故接触が起こるのかという点ですが、通常は以下のような原因が考えられます。

  • レボルバの対物レンズの同焦点距離は同じだが、焦点を合わせた位置が同焦点距離と異なる
  • レボルバの対物レンズに同焦点距離が異なるものが混在している

順番に解説していきます。

対物レンズの同焦点距離とは

対物レンズには「同焦点距離」という値が設定されており、これは対物レンズの倍率・レンズ本体の長短に関わらず、焦点を合わせた際の胴付面から標本面までの距離を表します。

WRAYMERの対物レンズはいずれも同焦点距離45mmで設計されており、例えば同じ顕微鏡に4倍・10倍・40倍のように異なる倍率の対物レンズが装着されている場合でも、上画像のように対物レンズ胴付面から標本までの距離が常に一定になるため、レンズ自体の長短に関わらず先端が標本に接触することなく利用ができるという仕様です。

同焦点距離は同じだが、焦点を合わせた位置が同焦点距離と異なるケース

ではなぜ、同焦点距離が一致する対物レンズ同士での切替においても、先端の接触が生じるのでしょうか。
もちろん要因は一つに限定できませんが、最も可能性が高いものが被写界深度の違いによるものです。

被写界深度は「焦点が合う深さ」であり、同焦点距離に完全一致する位置から±α存在し、この範囲に収まっていれば焦点が合った観察が可能です。
この被写界深度は倍率・開口数により異なり、低倍率・低開口数であるほど深く(±の誤差が許容されやすい)、高倍率・高開口数であるほど浅く(±の誤差が許容されづらい)なります。

これにより、焦点距離の誤差に余裕がある低倍率対物レンズだけで焦点を合わせた状態で、高倍率対物レンズへ切り替えた際、通常よりも標本と近接した位置関係になってしまうことがあり、作業距離が短い高倍率対物レンズの先端がステージや標本面に接触してしまう、ということが起こり得ます。

同焦点距離は同じだが、焦点を合わせた位置が同焦点距離と異なるケースの解決策

原因が低倍率対物レンズのみで焦点を合わせていることにあるため、焦点位置のシビアな高倍率対物レンズで焦点を合わせることで解決します。

常に低倍率対物レンズしか使用されない場合は特に問題ありませんが、複数の倍率を切り替えながら使用される可能性がある場合、必ず高倍率対物レンズにて焦点を合わせたうえでご利用ください。
また、高倍率対物レンズにて焦点を合わせておくことで対物レンズ同士の同焦点が得られ、対物レンズ切替時の焦点調整も(わずかな微調整が生じる場合を除いて)不要となります。

同焦点距離が異なる対物レンズが混在しているケース

対物レンズ切替時の接触のもうひとつの原因は、同焦点距離が異なる対物レンズが混在している場合です。

前述したとおり、WRAYMERの対物レンズはいずれも同焦点距離45mmのためこのような問題は起こりませんが、他社製の対物レンズを使用する場合などに起こり得ます。また、同じメーカー・型式の顕微鏡であっても、製造ロットにより対物レンズの仕様が異なることがあります。

例えば、同焦点距離45mmの対物レンズと、短頸対物レンズと呼ばれる同焦点距離が約37mmの対物レンズが混在している場合、45mmレンズで焦点を合わせた場合は切替による接触は起こりませんが(短頸対物レンズは本来の焦点距離より遠くに位置づくため)、短頸対物レンズで焦点を合わせた場合、本来の焦点距離よりも8mm程度標本に近づいてしまう45mmレンズは標本に接触してしまいます。

同焦点距離が異なる対物レンズが混在しているケースの解決法

同焦点距離の異なる対物レンズを混在させてしまっている以上、同焦点距離が一致する対物レンズに交換する以外に完全な回避策はありません。

短頸対物レンズで焦点を合わせた状態での倍率切替の場合、対物レンズ先端が標本やステージに接触しうることを想定しておき、注意しながら切換操作を行う必要があります。