FLOYD-4K・WRAYCAM-NOA630B+CマウントアダプタGCシリーズ使用時の撮影範囲イメージ
マルチインターフェース4KカメラFLOYD-4K・WRAYCAM-NOA630Bは、顕微鏡用カメラとしては一般的なサイズである1/1.8インチのセンサー(撮像素子)を搭載しています。
1/1.8インチなど、約1/2インチ程度のセンサーサイズのカメラはさまざまな用途に対応しやすく、広い(接眼レンズ視野に近い)撮影範囲、接眼レンズ視野よりも強拡大な像のどちらも撮影できます。
本記事では、マルチインターフェース4KカメラFLOYD-4K・WRAYCAM-NOA630BとCマウントアダプタユニバーサルタイプGCシリーズの各倍率を組みあせた際の撮影範囲や撮影像の違いについて解説します。
カメラFLOYD-4K・WRAYCAM-NOA630BとCマウントアダプタGC倍率における撮影範囲比較
実際にWRAYCAM-NOA630Bを使用して撮影した際の倍率による撮影範囲の違いを記載します。
なお、今回の撮影はOlympus CX43三眼鏡筒タイプの接眼部にCマウントアダプタGCシリーズを介してWRAYCAM-NOA630Bを接続して行っています(対物レンズ倍率:10倍)。
1. 接眼レンズ(視野数20)の視野

標準仕様の接眼レンズ(視野数20)を覗き込んだ際の視野はこのようになります(接眼レンズからのコリメート撮影)。
対物レンズ倍率10倍のため、0.1mmの目盛が20目盛(2.0mm)、接眼レンズ視野内に映り込んでいます。
この接眼レンズからの視野を基準として、Cマウントアダプタユニバーサルタイプの各製品により撮影範囲にどのような違いがあるかを見ていきましょう。
WRAYCAM-NOA630B+GC100(1倍)
CマウントアダプタユニバーサルタイプGC100(1倍)を介して三眼鏡筒に接続した場合の撮影範囲です。
長辺0.71mm(対角0.85mm)程度の撮影範囲です。接眼レンズ視野と比較して中心部を強拡大した像となります。
接眼レンズでの観察では確認しづらかった微小なものを大きく観察するという用途には有用ですが、分解能(像の細かさ)は対物レンズの性能に依存するため、像が拡大された=より細かいものや見えなかったものが見えるようになる、ではないことに注意が必要です。
細菌などの小さな対象物の画像をインパクトの強いものにするなど、強拡大な像を必要とするときに適しています。
3. WRAYCAM-NOA630B+GC075(0.75倍)
CマウントアダプタユニバーサルタイプGC075(0.75倍)を介して三眼鏡筒に接続した場合の撮影範囲で、長辺0.91mm(対角1.09mm)程度の撮影範囲です。
GC100との組み合わせよりも撮影範囲は広がりますが、まだ接眼レンズ視野と比べて強拡大な像となります。撮影したい対象物・観察範囲に対し、なるべく強拡大にしたいが1倍では必要な範囲が収まらないといった場合に有効です。
4. WRAYCAM-NOA630B+GC050(0.50倍)
CマウントアダプタユニバーサルタイプGC050(0.50倍)を介して三眼鏡筒に接続した場合の撮影範囲です。
長辺1.43mm(対角1.71mm)程度の撮影範囲で、接眼レンズ視野の85%程度が収まっており(対角の場合)、接眼レンズ視野に近似した撮影範囲といえます。
Cマウントアダプタの倍率が低いほど広い撮影範囲が得られますが、あまり低倍率すぎると撮影範囲が顕微鏡の像やアダプタのレンズ径を超えてしまい、撮影像の四隅や辺縁部に黒くケラレが生じます。
センサーサイズ1/1.8~1/2インチ程度のカメラを使用し、かつケラレが起きない範囲で広角に撮影したい場合、Cマウントアダプタの倍率は一般的に0.5倍~0.55倍程度のものが下限の倍率とお考えください。
※0.5倍であっても、顕微鏡の光束の大きさや接続方法によっては四隅がケラレる可能性があります。
なお、僅かなケラレであればソフトウェアのシェーディング補正機能にて対応が可能です。
5. WRAYCAM-NOA630B+GC037(0.37倍)
CマウントアダプタユニバーサルタイプGC037(0.37倍)を介して接続した場合の撮影範囲です。
長辺1.84mm程度と、接眼レンズ視野に非常に近い広い撮影範囲が得られますが、撮影像の少なくない範囲が黒くケラレた状態になります。
ここまで大きくケラレてしまうとシェーディング補正機能を使用しても修正が不可能であるため、ケラレのない像を得たい場合には適しません。
静止画の場合、撮影後に像が得られている範囲をトリミングする等で対処可能ですが、カメラの画素はケラレの箇所も含めて使用されているため、トリミングした場合はカメラ本来の解像度を全て利用していない画像ということになります。
ケラレを許容してでも可能な限り撮影範囲を広げたいような用途、例えば接眼レンズを覗きながら行っている手技をディスプレイ上で視野全体に近い像を共有したい場合や、視野全体を移動する対象物を動画に収めたい場合には有用なこともあります。
しかしながら、それでも接眼レンズ視野全体が収められるものではない点や、像が得られている円の内側であっても辺縁部は像のボケ・収差が発生しやすいというデメリットもあり、メリット・デメリット双方を理解したうえでの運用が必要です。
対応機種は限定されますが、ケラレを許容してでもなるべく広範囲の撮影像を得らえたい場合、以下のCマウントアダプタをご検討いただいたほうが良いことが多いです。ご参考ください。
Cマウントアダプタユニバーサルタイプ選択時の注意点
ご用途にもよる部分はありますが、基本的には撮影像のケラレはデメリットが大きく、避けたほうが無難です。
本記事ではセンサーサイズ1/1.8インチのカメラを使用しているため、0.5倍以上のアダプタのご利用を推奨いたしますが、その他カメラセンサーサイズ・アダプタ倍率・撮影範囲の関係については、以下記事をご参考いただけますと幸いです。
CマウントアダプタユニバーサルタイプGCシリーズは、嵌め合い径23.2mmのJIS鏡筒に取り付けられる設計になっており、利用できる顕微鏡が多い反面、レンズ口径が小さく低倍率のものを利用した際にケラレの範囲が広くなってしまいます。
レンズサイズが大きいCマウントアダプタであれば、同じ倍率でもケラレや像のクオリティ低下が小さい・生じないこともあるため、ケラレを許容しても極力広い撮影範囲が必要である場合、レンズサイズが大きいCマウントアダプタをおすすめします。
顕微鏡純正品という選択肢のほか、顕微鏡機種によってはレイマーが取り扱っております別のCマウントアダプタが使用できる場合もありますので、お困りの際はお気兼ねなくお問い合わせください。