顕微鏡接眼レンズで観察する際の「総合倍率」とは
顕微鏡の接眼レンズを覗いて観察を行う際の倍率(総合倍率)は、顕微鏡の販売サイトやカタログ等によく掲載されており、目にされることが多いかと思います。
この総合倍率、例えば「100倍」となった場合に、何がどう100倍になっているという意味なのか、本記事ではこの「倍率が示す意味」について解説していきます。
総合倍率は明視距離でのスクリーン上の倍率
総合倍率がどのような倍率を指しているかというと、それは「明視距離でのスクリーン上の倍率」です。
では、明視距離とはどのようなものでしょうか。
目が疲れずに物体をはっきり見つづけることのできる、目と物体との距離。正常な目では約25センチ。
出典:Goo辞書
上記のとおり、明視距離とは目から約25cm(250mm)先を指します。
顕微鏡の接眼レンズで観察を行う場合、この明視距離に仮想のスクリーンを作り、そのスクリーン上に標本を映し出して見ている、ということになります。
このスクリーン上に、例えば本来のサイズが1mmの標本が100mmのものとして投影された場合に「100倍」として表現されるのが「総合倍率」であり、それを250mm離れたところで見た際の見え方が、接眼レンズからの観察像です。
カメラ表示倍率と総合倍率
接眼レンズ観察の場合、仮想スクリーンは常に250mm先にあり、同じ顕微鏡を同じ倍率で覗いた場合には、だれが見ても同じように見えます。
倍率自体の考え方として、前述した「スクリーンに表示されたものが実サイズの100倍になっていれば100倍と表現する」という点については、接眼レンズ観察も顕微鏡用カメラ等を用いたディスプレイ上での表示でも同じものになります。
つまり、顕微鏡用カメラを用いて撮影像をディスプレイ上に表示させた場合のモニタ倍率「100倍」は、ディスプレイから250mm離れた位置から見ると接眼レンズ観察時と同じ大きさで像が見えるということになります。
ただし、実際にはモニタとの距離を一定にすることは難しく、スクリーン自体に近づいたり遠のいたりできるカメラ撮影像の表示倍率とは概念が異なり、近づけば像はより大きく、遠のけば像は小さく見えることになります。
そのため、倍率の概念としては総合倍率もカメラ表示倍率も同じものであると言えますが、実際に見える像は使用環境の影響を受けるため、それぞれの倍率がどのような意味を持つかを理解したうえで、必要な倍率を選定することが重要です。
なお、総合倍率と対物倍率やカメラ表示倍率との違いについては、別の記事で解説していますので、併せてご覧いただけると幸いです。