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顕微鏡でのサイズ計測(接眼ミクロメーターを使用する方法)

顕微鏡を使ってサイズ計測を行う場合、接眼ミクロメーターを用いて計測する方法と、顕微鏡用カメラのソフトウェア上で計測を行う方法があります。

本記事では、古くから使われている接眼ミクロメーターを使用する方法と計測における概念を解説していますので、本記事にて顕微鏡計測の概念を理解していただいたうえで、カメラソフトウェアでの計測を行っていただくことで、より理解が深まるかと思います。

接眼ミクロメーターとは

接眼ミクロメーターはレチクルとも呼ばれ、十字線や図形、細かな目盛などが描記された円形のガラススケールです。

接眼レンズに挿入して使用し、接眼ミクロメーターが挿入された接眼レンズで標本を観察すると、標本の像に目盛や図形が重なって見えるため、サイズの計測や、特定の図形との形状の近似性を確認するといったことが可能です。

接眼ミクロメーターにはさまざまな種類があり、レイマーで販売しているような一般的な十字線・目盛入りのもののほか、アスベスト計数に用いられるアイピースグレーティクルや、注射剤の不溶性微粒子計数用レチクル、粒度計測用のレチクル等があります。
本記事で扱う「計測」の場合、目盛が描記された接眼ミクロメーターを用います。

接眼ミクロメーターのサイズ

また、そのサイズも様々で、接眼ミクロメーター販売店ではオーダーメイドでのカットも可能である場合がありますが、汎用的に販売されていることが多いサイズは以下のとおりです。

  • φ19mm
  • φ20mm
  • φ20.4mm
  • φ21mm
  • φ24mm
  • φ25mm
  • φ26mm
  • φ27mm

接眼ミクロメーターのサイズは、取り付ける接眼レンズにより異なりますので、使用する接眼レンズに装着可能な接眼ミクロメーターのサイズを確認したうえで購入してください。

接眼ミクロメーターが使用できる接眼レンズ

接眼ミクロメーター自体はただのガラス板であるため、その装着先の接眼レンズにはガラス板を装着できる機構が備わっていることが要件になります

レイマーの顕微鏡の場合、標準付属品の接眼レンズにミクロメーター装着機構が備わっているものとそうでないものがあるため、事前に使用を確認したうえで、必要に応じて装着可能な接眼レンズをお求めください。

視度補正機構が備わった接眼レンズの効果

レイマーのミクロメーター付接眼レンズ等の場合、接眼レンズに視度補正環が備わっています。

接眼ミクロメーターを標本像に重ねて観察する場合、それぞれのピント位置が一致しない場合がありますが、視度補正機構が備わった接眼レンズであれば、これらを一致させるように調整ができます。

対物ミクロメーター等を用いた較正(キャリブレーション)

接眼ミクロメーターを装着している場合、前述のとおり標本像に目盛が重なって見えるため、それだけでサイズの計測ができるように思えます。

しかしながら、接眼ミクロメーターは接眼レンズに装着されているため、対物レンズの倍率が変化した場合でも視野内に占める割合は常に同じです。つまり、1目盛あたりの意味合い(実際のサイズ)が対物レンズの倍率によって異なってくるということになります。

そのため、接眼ミクロメーターを用いて計測を行う場合、1目盛当たりの実サイズをあらかじめ求めておき、観察時には目盛りの数だけを確認して、後ほど換算するといった手順が必要になります。
この「1目盛当たりの実サイズをあらかじめ求めておく」という作業が、較正(キャリブレーション)です。

較正は、あらかじめ長さの決まっているもの、対物ミクロメーターや金属定規(低倍率の場合)等を用いて行います。
接眼ミクロメーターの較正方法については、以下の取扱説明書にて解説していますので、併せてご参照ください。

較正が必要である理由

接眼ミクロメーターの目盛自体の実サイズは当然ながら決まっており、レイマーの接眼ミクロメーターの目盛であれば10mmの100等分(1目盛当たり0.1mm)となっています。

このことから考えると、対物レンズが1倍であれば1目盛は0.1mm、4倍であれば0.025mm、20倍であれば0.005mm…というように計算ができ、それで換算すれば事足りるようにも思えるかもしれませんが、残念ながらそれでは正確な実サイズは計測できません。

対物レンズにはあらかじめ設定された倍率がありますが、この値には若干の誤差があり、同じ4倍の対物レンズであったとしても僅かに高い・低いということが起こり得ます。

そのため、接眼ミクロメーターでの計測を行う際は、実際に使用する対物レンズにて必ず較正を行い、1目盛当たりの実サイズの誤差が生じないようにする必要があります。
同じ顕微鏡機種、同じ倍率の対物レンズが装着されていても、顕微鏡Aと顕微鏡Bそれぞれで、かつ各対物倍率ごとに較正を行う必要があります。

較正を行わずに接眼ミクロメーターだけでできること

前述のとおり、実サイズを正確に計測する場合は較正の必要がありますが、多少の誤差を許容するような場合であれば、較正を行わずに接眼ミクロメーターだけで使用することも可能ではあります。ただし、その場合は誤差自体がどの程度あるのか、ということも判断できない状態での使用になるため、留意しておく必要があります。

また、計測ではなく、単純にサイズの大小だけを比較するような用途であれば、特に較正を行っていなくても問題は生じないでしょう。
具体的には、2つの標本に対し、Aが5目盛分の長さ、Bが6目盛分の長さだったのでA<Bになる、というようなことだけを確認するような場合です。

接眼ミクロメーターでの計測と顕微鏡用カメラソフトウェアでの計測の違い

接眼ミクロメーターを用いた計測は較正を行うことで利用できますが、カメラソフトウェアでの計測も同様に較正を行ったうえで利用します。

カメラソフトウェアでの計測については別の記事にて解説しますが、接眼ミクロメーターを使用した計測と顕微鏡用カメラソフトウェアでの計測の主な違いには、以下のようなものが挙げられます。

【どちらも共通】

  • 較正を行う

【接眼ミクロメーターを使用した計測】

  • 目盛りを重ねた対象が計測できる仕様のため、目盛の位置(主に視野中央)に標本を移動させる必要がある
  • 1目盛当たりの較正値を書き留める等しておき、実サイズの算出には自身での計算が必要
  • レチクルの形状と異なるものは計測が出来ない(直線の目盛の場合、円形の外周等は計測できない)

【カメラソフトウェアでの計測】

  • 撮影範囲上であれば、任意の箇所をクリックして計測可能(中央への移動不要)
  • 較正値はソフトウェアに保存され、実サイズは自動的に計算される
  • 様々な形状の計測ツールが用意されており、円や多角形等の複雑な形状も簡単に計測できる
  • 計測結果を画像に含めて撮影可能

接眼ミクロメーターは比較的安価に導入可能で、計測の概念を学ぶという経験においては有用ですが、昨今では顕微鏡用カメラソフトウェアでの計測が非常に高機能となっているため、特段のこだわりが無く、ご利用に支障もない場合は、顕微鏡用カメラソフトウェアでの計測をおすすめいたします。